骨格標本
蛇が死んでしまったので骨格標本を作る
2020年11月05日
博物館に飾ってあるような骨格標本。
死体さえ用意できれば、意外と家庭でも作ること可能です。
ここでは、個人で楽しむ用に骨格標本のいろんな作り方をご紹介。
私が今まで作ってきて感じたメリットデメリットもあるので、死体の種類や状態、制作環境に合わせて作り方変えてみて下さい。
まずは作り方の流れです。
小動物の場合机と椅子があれば問題ありません。
大型動物だと解剖室レベルでスペースが必要なので、最初はスズメやネズミといった小さいものからやってみることお勧めします。
因みに、こちらは猪の解体の様子。
大きいものはこうやって吊るせる環境があるとやりやすいです。
作る方法によって変わりますが、必需品と思われるものはこちら。
メス
肉を切れるものならなんでもいいです。私は最初カミソリでやってました。
手袋
死体には直接触らないでください。破れにくい、手のサイズにあったものがいいです。
ピンセット
主に除肉の時に使います。百均でも売ってますが、お勧めしません。先がギザギザしていて、肉がしっかり掴めるものがいいです。ホームセンターで500円くらいのでいいので買ってみましょう。
私が使ってるのは医療用のピンセット。長時間使っていても疲れにくいのでおすすめです。
アセトン
骨を脱脂する為に使います。
薬局で除光液として販売されていて入手は簡単です。
ただ、アセトンフリーの除光液もあるので、成分表みてアセトンが使用されてるものを選びましょう。
オキシドール
骨を脱脂・漂白するのに使います。
これも薬局で入手可能。
先の脱脂により十分白くなるので必要ない時もあります。
体重・性別・頭胴長・耳長・尾長を測定します。
完成後、標本ラベルに記録します。
インテリアとして楽しむだけだから別にいいよ!という方はスキップし下さい。
死体の状態から骨にするまでの工程。
いろんな方法があります。
それではそれぞれのやり方をご説明します。
小さな生き物や、軟骨が多く一気にバラしたくない生き物などの時にこの方法を利用しています。
また、ポリデント+後述するその他の方法と組み合わせて骨にしたりしています。
【メリット】
【デメリット】
【向いてる対象】
それでは具体的な方法について。
ポリデントとは言っているれど、つまりは「ピンセットで地道に肉を取る」方法です。
作業服、手袋を着用し、メスとピンセットを用いて皮を剥ぎます。
メスとピンセットで肉や内臓を切り取っていきます。
内臓と、ある程度の筋肉が取れたら次の工程にい進みます。
ポリデントに限らず、たんぱく質分解酵素が含まれているものであればなんでもかまいません。
入れ歯洗浄剤も様々な種類がありますが、とくに効力に違いはありません。
小動物だと1日くらい漬けて置きます。様子を見ながら待ちます。肉が半透明でプルプルになったら引きあげます。
ポリデントに漬けて柔らかくなったら、さらに徐肉をします。
ピンセットでひたすら筋肉を取り除きます。
この時、骨と骨をつなぐ靭帯を残し、肉だけ取り除くと、骨がバラバラにならずに済みます。
肉を全部取り除いたら次は脱脂です。
これは文字通り、野ざらしにするだけの方法です。
【メリット】
【デメリット】
【向いてる対象】
大型動物の頭骨など。
山に入って、立派な角を持つ雄鹿の死体を発見!しかし、腐敗してるし、大きすぎて持ち運べそうにない。
といったシチュエーション。
特に説明することもないですが、強いていうなら草陰とかに隠す…でしょうか。
このように毛がついていて匂いも残っている場合は、もう少し放置したほうがいいです。
こちらは完全に骨になって匂いもしなくなくなりました。こうなったら、次は漂白です。
【メリット】
【デメリット】
【向いてる対象】
大型動物。腐敗が激しい死体、干からびた死体。
私の場合ですが…
ウジがたかって、近づくのも嫌な死体や、メスが入らないくらいカチカチの死体なんかは、丸ごと水の中へ放り込んで放置します。
とにかく腐臭と虫が凄いので、周囲に家がなく、人がこない場所が必要です。
どんなに死体の状態が悪くても、皮つきのままでも、夏場で1か月ほどできれいな骨になるので、環境さえ用意できればいい方法。
死体の状態が悪くなくても大型動物にこの方法はいいと思います。
その場合の手順をを記します。
用意するもの
作業着と手袋を着用しナイフを用いて剝皮・内臓を除去します。
図の様に6分割、もしくはバケツやネットに入るサイズに切り分けます。分割したものはそれぞれ洗濯ネットにいれます。
バケツに水を張って浸けておきます。大きさにもよりますが夏場で1~3ヶ月程度。
浸け過ぎると骨まで分解されていくので注意。
なんとなくハエが集らなくなったら、引き上げ時な気がします。
ネットを引き上げ、骨の様子をみます。きれいに骨になっていたら、水で洗い流してこの工程は終了。
次は脱脂を行います。
【メリット】
【デメリット】
【向いてる対象】
小動物。
先の「野ざらし法」や「水に浸ける方法」もある意味虫(や微生物)に分解させる方法ですが、こちらは室内でできる方法です。
使用する虫はミールワームやカツオブシムシ。ミールワームはペットショップに餌用として売られています。
成虫になってもハエのようにブンブン飛び回らない点、蛆よりいいです。
以下、骨にする方法です。途中まではポリデント方と同じです。
<用意するもの>
作業服、手袋を着用し、メスとピンセットを用いて皮を剥ぎます。
メスで肉や内臓を切り取っていきます。
ある程度手で徐肉できたら、死体と一緒に虫を飼育ケースへ入れます。1日おきぐらいに様子をみながら、肉を全部食い尽くしたタイミングで引き上げます。
バラバラになった小さな骨も丁寧に全部拾い集めます。
これで終わりです、次は脱脂の工程へ進みます。
猟師のおっちゃんとかがよくやってる方法(偏見)
【メリット】
【デメリット】
【向いてる対象】
中~大型動物
剝皮して、内臓とって、ひたすら煮込む!以上!
煮るとき重曹を入れると肉がとれやすくなりますが、鍋を傷めるのでアルミ製のものは避けます。
6時間くらい煮込むと、トンっとたたいただけで肉がとれるらしい。
写真は沸騰後約3時間煮込んだものです。十分骨になっています。
イノシシやシカの頭骨とかにいい方法です。
他にも、酵素入り洗剤をいれて沸騰させないくらいに加温し、骨にする方法もあります。
加温する時間や洗剤の量など調整すれば小動物の骨も制作可能です。
アセトンに浸け脱脂します。
使用上の注意を箇条書きします。
アセトンに浸ける期間は小動物でだいたい2週間以上。サイズが大きいと数ヶ月。
長く浸けても問題ないありません。
また、アセトンは使いまわし不可です。一度使ったら廃棄します。
余談ですが、昔なんの液体が入ってるかわからず、直接嗅いだら鼻血でました。
アセトンでした。(最低限手で仰いで嗅げよなぁ、、、と呆れますね)
こんな阿呆で危険な事しないように…容器にはなんの液体が入ってるのか明記しとくとよいです…。
オキシドールに浸けます。先のアセトンに浸ける工程で脱脂ができていないと、オキシドールに油が浮いてしまうことがあります。
オキシドールは使いまわせるので、液を汚さない為にもアセトンでしっかり脱脂しておくと良いです。
浸ける期間は、スズメやマウスなどの小動物で1時間程度。最初は30分おきくらいに様子を見ながら浸けるといいかもしれません。
オキシドールは骨を溶かしてしまうので、浸け過ぎに注意です。
大型動物等、大量の液が必要な場合は排水溝クリーナー(パイプユニッシュ)でも代用できます。
バケツに水を入れ、パイプユニッシュを入れて、骨を浸ける。
写真はイノシシの頭骨をパイプユニッシュに浸けているところです。
量等は製品容器の説明を読んで調整してください。
オキシドールから上げた後は、流水で洗い流し、ある程度形を整え乾かします。
写真はマウスの骨を乾かしている様子です。
骨が乾いたら組み立てていきます。マウスくらいのサイズだと瞬間接着剤だけで接着できます。
骨がバラバラになった場合は、一つ一つパズルをはめていく様に組み立てていきます。
組み立てる順番以下に記します。
まず骨がそれぞれどの順でどこにあるのか、並べていきます。
次に椎孔に入る太さの針金で背骨の形を決め、椎骨をビーズのように通していきます。
その後、胴体⇒手足、最後に頭の順で組み立てていきます。
大型動物は、椎間円板(椎骨同士の間隔を保ち脊柱のカーブをつける上で重要な部分)をゴムやスポンジ等で代用する様ですが、最初はそこまでやらなくてもいいんじゃないかな。
詳しく知りたい方は「骨格標本作製法(*1」をご参照ください。
また、骨同士をつなげるのには「コイル留め」という方法があります。
接着剤は衝撃や劣化で取れてしまうことがありますが、コイル留めをすると取れません。丈夫な骨格標本が作れます。
以下コイル留めの方法です。
用意するもの
① ピンバイスで骨に穴をあけます。真鍮線を通すため、この直径より大きい穴です。
② 太い針金に真鍮線(イラストでは赤色)を巻き付けます。
③ ラジオペンチできゅっとやって、針金を抜きます。
④ 真鍮線に骨を通し、反対側も同じようにコイルを巻きます。
このように、接着剤やコイル留めで骨同士を固定し全身の骨を組み立てます。
また話がそれますが、私は「絶対にこれをやってはいけない」という方法はなく、自分のやりやすい方法で作ればいいじゃない。と思っています。
が、唯一許せないのが「グルーガンで骨同士を接着」…です。ネットで調べたらでてきたので試しにやってみたのですが、強度0。少し力を入れると取れてしまいます。
なのでここではオススメしない方法としてご紹介します。
(小学生の自由研究用にはいいかもしれませんが…)
ちなみに、コイル留めとグルーガンを両方使うことはあります。
ここでは一番簡単な方法のみご紹介します。
用意するもの
ここにきて説明がさらに雑になりました。
正直、台の制作・骨の設置は工具が必要になってくるという点で難易度があがります。
ためしに「骨格標本作製法(*1」に記載されている、道具を一部あげてみましょう。
ダイス(凸ネジ切り器)とハンドル、ハンドルタップハンドル(凹ネジ切り器)とハンドタップの刃、ハサミ、メス、キリ(中略)ドリルとドリル刃、ヤスリ類、ポンチ、金槌、金鋸、万力
いかがでしょう。普通は持ってないです。ということで詳しい説明は省きます。
本格的に作りたいかたは「骨格標本作製法(*1」をご参照ください。
ラベルを作り骨と一緒に保管します。
ラベル記載項目は以下の通りです。
和名、学名、採取地、採取年月日、標本作製期間、性別、体重、体長、その他ステップ①で測定した内容、標本製作者名
以上が骨格標本の作り方です。いかがでしたでしょうか?
文章で書くと難しそうに思えますが、意外と手軽にできます。
よく「どうやってつくるのか?」「家でできるのか?」といった趣旨のご質問を頂くので、今回ここにまとめさせていただきました。
(制作に関するご質問にはお答えできませんのでご了承ください?)
さらに詳しく知りたい方は、後述する参考書籍をご参照ください。
このブログの筆者
cocoro
"標本葬"として、亡くなったペットの骨制作を請け負う仕事をしています。(詳細はこちら)
骨を使った作品をEC/実店舗への委託販売/イベントへの出展等にて販売も。
たくさんのお蛇とヤモリ、亀、ハリネズミたちと暮らしてます。