ペットのハリネズミを骨格標本にしたお話

「ご自身のペットを標本にしたことはありますか?」

亡くなったペットを骨格標本として残す「標本葬」というサービスを始めて約6年。
しばしば、このようなご質問をいただくことがあります。

現在の私は様々な生き物をペットとして飼育していますが、
正直なお話、標本葬を始めた頃は自分のペットを標本にした経験はありませんでした。

元々は野生動物を中心に標本制作をしており、たまたま友人から、ペットを骨格標本として残してほしいという依頼があったのをきっかけに、始めたサービスだったのです。

とはいえ、自分のペットかどうかで、普段の制作と違った体験になるとは思っていませんでした。
心理的な抵抗も無いだろうと思っていたのです。

そんな私が、初めて自分のペットを標本にしたのは2023年のこと。

飼っていたハリネズミの「ハリモ」が死んでしまったのです。

自身のペットを標本にしてみるというのは、想像していたより少し違う経験となりました。

そのことを、ハリモの思い出と共に、記録しておきたいと思いここに綴ります。

ハリモとの出会い

ハリモは、正確に言うと夫が飼っていたハリネズミです。
でも、一緒に暮らして愛情持ってお世話していたので「私も飼っていた」と言って過言ではないかと思います。

ハリモに出会ったのは2021年、とあるイベント会場でした。

当時私は、ハリモとは別に「ハリヤマ」というハリネズミを飼っていました。

このハリヤマが、性格的にとんでもねぇ奴で、針で攻撃してくるし、噛み付いてくるしで、触れ合うことは一切できないようなハリネズミでした。
(ハリヤマのそういうところが大好きだったんだよね)

とにかく、元々飼っていたハリネズミがそんな性格だったため、ハリモとの出会いは衝撃的でよく覚えています。

ブリーダーさんから手渡しされたハリモは、一切針を立てることなく、おとなしく手の中に収まっていました。
手で感じるハリネズミのお腹はモッチモチでしっとりしていて、大きな衝撃を受けました(当時ハリネズミを飼っていたはずなのに)

その時点でかなり心を掴まれたのですが、ブリーダーさんからトドメの一言。

「この子、優しい子なんです」

聞くとハリモは、小さい時に兄弟に齧られ、片耳が欠けてしまったようでした。
それでブリーダーさんは「優しい子」と表現したようです。

今思うとそれは「鈍感」とか「おっとりしてる」というべきで「優しい」とはちょっと違うんじゃないかな、と思うのですが。
(ハリモ自身が齧られたことを許しているかどうかわからないわけだし…)

とにかく私たちは「優しくて片耳が欠けちゃった」というエピソードに惹かれ、ハリモをお迎えすることに決めました。

片耳が欠けているハリモ

ハリモとの思い出

実際、ハリモはとっても優しい子でした。
酔った私にダル絡みされても、なされるがままで、寛容に許してくれるようでした(ハリヤマには絶対許されない行為)

また、非常に食いしん坊でもありました。
ハリヤマが1日かけて食べる量のご飯を、ハリモは掃除機で吸うかのようにあっという間に平らげてしまう子でした。

運動はそんなに好きではないようで、回し車を回すけれど、部屋んぽは一切しませんでした。
ハリヤマは部屋中を駆け巡る子だったので、二匹はとことん正反対の性格だったようです。

(左)ハリモ(右)ハリヤマ

そんな、優しくて食いしん坊なハリモは、飼育して2年が経ったある日、急にご飯を食べなくなってしまいます。

病院に連れて行くと、リンパあたりに癌ができており、余命半年と宣告されてしまいました。
ハリネズミの寿命は5年程度と聞いていたので、あまりにも早い余命宣告です。。

幸い、病院からもらったお薬が効いてくれて、ハリモの食欲は戻ってくれました。

それから半年間、お薬を飲み続けたおかげか、ハリモは亡くなる直前まで大好きな食事を楽しめたように感じます。

そして2023年1月、大好きなミールワームを2匹食べ、病院からの帰り道、ハリモは夫の手の中で天国に旅立ちました。

亡くなったペットを解剖するという体験

ハリモが亡くなり、飼い主である夫から「骨格標本として残してほしい」と言われ、人生で初めてペットの骨を作ることになりました。

冒頭で述べたように、飼っていたかどうかで何か変わるものではないと思っていたのですが、実際制作してみると、気づくことが多くありました。

まず最初に、メスを入れた瞬間に驚いたのは「脂肪の量」です。

ハリモは食べることが大好きだったので、余命宣告を受けてからは、悔いのないようにと好きなものを与えていました。

そして元々好きではなかった(?)運動は、病気が進行するにつれ、全くしなくなってしまいました。

なので、肥満であることは、当然と言えば当然なのですが…

もしペットでなければ「肥満」という事実しか知ることができませんでした。
亡くなるまでの出来事(余命宣告→好きなものを与える→運動ができなくなる)を知っていることで「肥満」というのは「一連の流れの結果」なのだと、改めて実感することができました。
点と点がつながり、線として認識できたという感覚です。

作業を進めて、脂肪を取り除くと、さらに驚くことがありました。
内臓のほとんどが腫瘍だらけだったのです。

「身体がこんな状態なのに、よくあれだけ食べれたなぁ。」と呟かずにはいられませんでした。

ハリモは無理して食べていたんだろうか?
でも…ミールワームやハニーワームを見た瞬間だけ機敏に動く様子、目をまんまるにさせて、勢いよく吸い込む様子、食べ終わると物欲しげにこちらを見る様子は、とても無理していたようには思えませんでした。

ハリモが食いしん坊であることは知っているつもりでしたが、想像以上に食への執着が強かったのかもしれません。

他にも気付かされる点がいくつかあり、ペットを自身で解剖するという体験は、

・その子が生きてきた「結果」を知ることができる
・生きている時には知り得なかった新たな一面を知ることができる

そのように感じました。

もちろん、自分は獣医ではないので、拾える情報は無いに等しいです。
剖検に出していたら、もっと多くのことが知れたのではないかとも思えます。
それでも、幾許かの新しい事実を自分の手で知ることができてよかったと思えたのです。

その経験を踏まえて…

「ご依頼で預かった子の解剖時に気づいた点は、なるべく飼い主様に共有しよう」という考えになりました。

自分にとってはよくある事象の一つでも、飼い主様にとっては新事実だったり、点と点が繋がる瞬間だったり、今後の飼育で役立てる情報だったり…するかもしれません。

ただ、お伝えする内容によっては、大変ショックを受けられる飼い主様もいらっしゃったり…
と、なかなか難しさも感じています。

骨になったハリモ

2ヶ月程度の制作期間を経て、ハリモは綺麗な骨の姿になりました。

ハリネズミって、針がある分体の柔軟性に欠けるのですが、
ハリモはご飯の気配を感じると、体を捻って最短距離でこちらに来ようとしていました。
そんな、必死のポーズを再現しています。

また、夫の希望で、針の部分も残しました。
この部分って、ハリネズミとしての存在感の99%くらいを担っている気がします。
針が視界に入るたびに、脱走したかと思って心臓が飛び上がるのです。
いまでも視界に入るとびっくりするので、普段は大切にしまっています。

以上が私の、ペットを標本として残した体験談でした。

最期までいろいろ教えてくれてありがとう、ハリモ。

cocoro

このブログの筆者

cocoro

"標本葬"として、亡くなったペットの骨制作を請け負う仕事をしています。(詳細はこちら)
骨を使った作品をEC/実店舗への委託販売/イベントへの出展等にて販売も。
たくさんのお蛇とヤモリ、亀、ハリネズミたちと暮らしてます。                

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